化粧品には無香料のものから香料でさまざまな香りをつけたものまで存在します。

香りは、商品に高級感を与えたり、商品の特徴をあらわしたり、また原料の嫌な臭いをマスキング(香料で消す)するために配合されるのが一般的です。しかし、化粧品に配合されている香料の中にはリラックス効果、血行促進効果、さらには美容効果を期待して配合されているものも存在します。

そこで今回は、香りがもたらすさまざまな美容効果について説明していきます。コスメ選びの判断材料の一つとして役立ててください。

香料が決め手!高級コスメとチープなコスメの決定的な違い

ドラックストアで売られているクリームとデパートの高級ブランドが販売しているクリームには10~100倍近くの価格差が存在します。この価格差は一体どこからくるのでしょうか。

世界中で販売されているある安価な価格のロングセラークリームと、あるブランドがプロデュースした超高級クリームの配合成分がほとんど同じだということが一時期インターネット上で話題になりました。

一般的に化粧品の開発者は商品を開発するときに、まず「基本処方」を決めます。基本処方とは、配合する原料の骨格となる処方のことです。基本処方は会社ごとに長年の研究で蓄積された重要な財産ともいえます。

このような自社で蓄積された処方の中から基本処方を選ぶこともあれば、ヒットしている商品の原料を分析してそれを元に基本処方を組み立てることもあります。

なぜ基本処方を決めるのかというと、一から新しい処方で骨格を組むと、原料の相性などを全て考慮する必要があり、製品の安定性・安全性を確実に保証できないからです。

特に油と水の混じった乳液やクリームは、もともと分離する性質のある二つの成分を無理矢理混合するので安定性を保つことが大切です。化粧品の開発者は、既に発売されて品質が確保されている基本処方を用いることでスムーズな新製品の開発を目指します。

もちろん基本処方をそのまま使用したのでは商品のオリジナル性がありません。そこで、安定性を重視して少しずつ原料を増減したり新たな原料を試したりして、目標とする製品に仕上げていきます。

このような開発の進め方は、高級ブランドのスキンケア製品を開発するさいもドラックストアブランドの安価なスキンケア製品を開発するさいも基本的には変わりません。よって価格差が100倍存在する商品であっても、基本処方は同じということは十分にあり得る話です。

この100倍の価格差は「原料の質の違い、基本処方の違い」ではなく、商品の付加価値をもたらす「美容成分の違い、容器の質の違い、香料の質の違い」によって生じるものといえます。

この中でも決定的に異なるものが「香料の質の違い」です。高級ブランドの化粧品に高級感があるのは使用感やパッケージ、ブランドイメージなどもありますが、やはり使用している香料の質が高いことが一番影響しているといえます。

香料は原料費が高く、安価な商品には質のよい香料は配合できません。安価で販売されている商品の香料は、天然の精油ではなく、石油系で人工的につくられた香料です。

天然の香料は香りが強くない上、温度変化などに弱い性質をもっています。そのため配合量もそれなりに必要です。一方石油系の香料は香りが強く、安定性も高いので少量で香りをつけることができます。

高級化粧品の香料としても使用される精油(植物の香りを抽出した天然オイル)を1kg抽出するには、ラベンダー精油であれば花が100~200kg、ローズ精油なら花が3~5トンも必要であるといわれています。

つまり、質の高い香料の配合にはそれなりのコストがかかるのです。

病気の治療にも使われる「アロマテラピー」とは

香りがもたらす美容効果について説明する前に、病気の治療にも使われる「アロマテラピー」について紹介します。

アロマテラピーとは、植物の力を利用し病気の治療や予防、リラクゼーション、ストレスの解消を目的とした芳香療法です。

精油の中には免疫機能(ウィルスなどから身を守るシステム)を高めたり、脳を刺激してリラックス効果やホルモンバランスを整えたりする効果があることがわかっています。

現在、介護分野で注目されているのがアロマテラピーによる認知症への効果です。実際に、精油を嗅ぐことで認知症が改善されるという実験データもあります。

このように精油には生体内に働きかける作用があります。では精油は一体どのように体に働きかけるのでしょうか。

精油の芳香成分は揮発性が高いため、鼻を通って脳に香りの刺激を伝えることができます。刺激を受けた脳が心身のバランスをとるように働きます。

また、呼吸で吸い込まれた揮発芳香成分の一部が肺に届き、血液にのって全身に運ばれ、さまざまな生体作用をもたらすのです。

さらに、アロマバス(お風呂に精油をいれて浸かること)やマッサージなどで芳香成分の一部は皮膚からも浸透して毛細血管から全身へと運ばれます。

つまり、鼻・肺・皮膚を通して精油は全身に作用することができます。

香りが美容にもたらす効果について

続いて美容効果についてです。

前述した通り、精油は鼻・肺・皮膚を通してさまざまな作用をもたらすことが期待できます。その中でも化粧品メーカーが注目しているのが「鼻を通って脳を刺激する働き」です。

例えば、美容成分で代表的なセラミド、ヒアルロン酸、アルブチンやビタミンC誘導体などの美白成分は肌に直接働きかけて美容効果を発揮しますが、脳に働きかけることは決してありません。

なぜなら、脳に働きかけるには「血液脳関門」という関所のような壁を通過する必要があるからです。この血液脳関門をくぐりぬけるには、サイズが小さいなど構造上の制限が設けられています。このように私たちの脳は、血液中の物質を簡単に脳内へ簡単に入り込まないように血液脳関門によって守られているのです。

しかし揮発性の高い香りは血液脳関門を介さず、鼻から通って直接脳へと伝わります。脳が香りの分子を電気信号として受け取り、脳内神経伝達物質(脳が全身や心に送るシグナル)の働きやホルモンの分泌に変化をもたらすと考えられています。

ある高級化粧品ブランドでは、配合されている精油が脳内エンドルフィン(幸福感を与えるといわれているホルモン)の分泌を高めるという研究結果を活用し「リラックス効果の高い化粧品」を販売しています。実際に脳波測定や心電図を測って効果を実証しています。

その他にも女性ホルモンの分泌を増やすといわれている精油を配合したり、血行をよくする精油を配合したりして香りから美容効果をアプローチする化粧品が次々と誕生しています。

化粧品を選ぶさいは、ぜひ配合されている香料(精油)にも着目してみましょう。特に高級化粧品の香料には、さまざまな効果を期待して配合されていることが多いので、ただ香りが好きだから選ぶのではなく、精油の種類・効果も加味して選ぶようにしましょう。

香り別!期待できる効果について解説

それでは、どの精油にどのような効果があるのかについて解説していきます。脳へ働きかける精油と皮膚に直接働きかける精油の2つに分けて紹介します。

脳へ働きかける精油

・ローズ、ゼラニウム

ローズ、ゼラニウムの精油には、リラックス効果があります。ストレスを和らげ、美肌に導くことが期待できます。

・クラリセージ

クラリセージ精油は、女性ホルモンのバランスを整える効果があります。女性ホルモンは肌にツヤや弾力を与える大切なホルモンです。

・ラベンダー

ラベンダー精油はリラックス効果のある精油です。体のこわばりや腸の緊張がほぐれることから便秘にも効果があるといわれています。便秘を改善することで肌荒れが治る可能性があります。不眠にも使われます。

・ティートゥリー

ティートゥリー精油には免疫機能を高める効果、殺菌効果があります。よってニキビに効果があります。

・柚子

柚子の精油の主成分「リモネン」は、副交感神経を優位にして血管を拡張します。血行を促進するためむくみへの効果が期待できます。

皮膚に直接働きかける精油

・スイートアーモンドオイル、アイリス

スイートアーモンドオイル、アイリス精油には、メラニン(シミの元になる色素)生成抑制作用があるといわれています。よって美白効果が期待できます。

・フランキンセンス

フランキンセンスの精油は、「ピネン」や「テルピネン」などの抗炎症成分を含んでいます。また、肌の細胞を活性化し肌の再生に働きかけます。ハリやうるおいをもたらすので乾燥肌におすすめです。

・ローズマリー

ローズマリー精油はリンパの流れを促す働きがあります。溜まった老廃物を流し、肌荒れ、くすみなどの改善に期待できます。

・グレープフルーツ

グレープフルーツ精油は、皮脂の分泌を抑える働きがあるためオイリー肌におすすめです。その他、吸入により脂肪燃焼効果、吐き気を和らげる効果、リラックス効果もあるといわれています。

・イランイラン

肌には直接関係ありませんが、イランイラン精油には細胞を活性化して皮脂のバランスを整える作用があるため抜け毛や薄毛などの頭皮ケアによいといわれています。

期待できる効果に合わせてこれらの精油が配合されている化粧品を使用してもいいですし、吸入やアロママッサージで精油を体に取り込むのも効果的です。

そのとき、精油の品質には気をつけましょう。安い精油の中には不純物がたくさん含まれているものがあり、肌に刺激を与える可能性があります。

きちんと植物の学名や原産地、抽出方法が明記されている精油を選ぶようにしましょう。精油自体は安く生産できるものではないので、安い精油は避けた方がよいでしょう。

また、精油は植物のエキスですので人によっては肌に合わなかったり、アレルギー反応を引き起こしたりすることもあります。使用前に、精油を薄めてから体の皮膚を使ってパッチテストしてみましょう。

また、精油は希釈して使用するのが基本です。肌への塗布やマッサージでは「キャリアオイル」とよばれる植物オイルで薄めてから使いましょう。キャリアオイルには刺激を和らげるだけでなく、精油の成分を肌に浸透させる働きがあります。

キャリアオイルとしてホホバオイル、マカダミアナッツオイル、スイートアーモンドオイルなどがあります。精油そのものを肌に直接つけるのは絶対にやめましょう。

まとめ

「無香料の化粧品が好き」という方も、香りがもたらす美容効果を知ったら香料の配合された化粧品に興味がわくのではないでしょうか。香りには化粧品に配合されているさまざまな美容成分にはない効果・作用のメカニズムをもっています。

特に「脳に働きかけることができる」というのは重大な特徴といえます。香料によっては、スキンケアをするだけで美しくなるだけでなく、ストレスを解消し、リラックス効果も得られるのです。

もちろん、香りには好みがあるので一概におすすめすることはできませんが、香りがもたらす美容効果を知ってぜひ化粧品選びに役立ててください。