あなたは老化の発症メカニズムについて考えたことはあるでしょうか。私たちは一体どのようにして老化していくのでしょうか。実はまだ、科学的に老化過程のメカニズムについて解明されていません。逆にいえば、全てが解明されれば老化がなくなる日も来るかもしれません。

今回は、現在いくつか存在する老化の学説から肌のアンチエイジングについて考えていきましょう。

老化の一般的学説

「学説から考える」というタイトルだけを見ると、「少し難しそう……」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、わかりやすく説明していきます。

まずは、老化過程の理解に重要とされている代表的な学説4つについてです。

代表的な老化の学説4つ

1. 消耗説

消耗説はドイツの生物学者によって発表された説です。私たちの臓器は食事や毒素、紫外線、感情的なストレスにさらされることによってすり減ってしまう=消耗するということです。この消耗スピードはその人がもつ生活習慣や体の機能によって異なります。

さらに消耗は一方的に進むのではなく、食事や治療によって巻き戻すことができるとしています。臓器の消耗を老化と結びつけた学説です。

2. 神経内分泌説

神経内分泌説は、消耗説を神経内分泌系から追及した説です。神経内分泌系とは、ホルモンの放出やその他の生理機能(消化、呼吸、排便など)を支配している複雑なネットワークのことです。身体機能の調節にはホルモンが一体となって働いています。

「臓器ごとにさまざまなホルモンを放出し、それがまた別の身体的反応を刺激する……」といった連鎖反応で身体機能が支配されています。ホルモンは身体機能を修復・調節するために非常に重要なのです。

しかし、老化がホルモンの産生量を低下させ、身体の修復機能や調整機能の低下を引き起こします。つまりホルモンの分泌量の低下によって臓器の消耗が引き起こされているという学説です。

もし、ホルモンの分泌量が若者レベルにまで戻れば、細胞は刺激され若さを保つと考えられています。実際、神経内分泌説に基づいたアンチエイジング療法が存在します。それは「ホルモン補充療法」です。外からホルモンを補充することで老化を遅くしたり進行を遅らせたりすることができるとしています。

美容医療で用いられている「ホルモン注射」も神経内分泌説から生じています。

3. 遺伝子コントロール説

遺伝子コントロール説は、DNAにコード化された遺伝的プログラムによって私たちの寿命はあらかじめ決まっているという説です。

しかし、「運命は変えられない」わけではなく、この遺伝時計のタイミングは生活習慣や日常の出来事など「どのように生きるか」によって非常に変化しやすいとしています。

さらにDNAの損傷の予防と修復がアンチエイジングにつながると考えています。

4. フリーラジカル説

フリーラジカル説は「フリーラジカル」という不安定な電子によって体の中で老化反応が繰り返されて老化が進んでいくという説です。

フリーラジカルは全てが悪いわけではありません。不安定な状態はエネルギーをもっているとも言い換えられます。このエネルギーは免疫を維持したり、神経の興奮を伝えたり、ホルモンを合成したり、筋肉を収縮したりとさまざまな生理機能に必要な存在なのです。

しかし、フリーラジカルは体内の細胞膜も攻撃してしまいます。こうした攻撃によって産生される物質として「リポフスチン」という物質があります。リポフスチンが過剰になると老人性色素班と呼ばれるシミとなって皮膚にあらわれます。

ここで、「老人性色素班は紫外線によって生じるのでは」と思った方がいらっしゃるかと思いますがその通りです。紫外線によるダメージによって肌の細胞内で不安定なフリーラジカルが発生してしまうのです。

私たちの身近で反応が繰り返されている酸化も、フリーラジカル反応の一つと捉えることができます。例えば、リンゴを切って置いておくとすぐに色が変わってしまいます。りんごの内面が空気(酸素)に触れることによって酸化し、変色するのです。

酸素の中で、フリーラジカルをもつ活性化した酸素のことを「活性酸素」と呼びます。活性酸素は著しく化学反応を起こしやすい物質で、体内で大量に発生すると細胞やDNAを傷つけることがわかっています。

酸素はもともと不安定な分子であり、体内に入った酸素のうち数%は活性酸素になるといわれています。つまり、ただ息をするだけでも老化過程を促進するフリーラジカル(活性酸素)を生じていることになります。

その他の老化学説

4つの学説以外にもさまざまな学説が存在します。

・老廃物蓄積説

私たちの体は寿命の中で体が処理(除去)できる以上の老廃物を作りだします。老廃物はさまざまな毒素を含み、蓄積量が一定を超えると正常な細胞機能を妨害して、最終的には殺してしまうのです。つまり老廃物の蓄積が人間の寿命を決めるという説です。

・殺人ホルモン説

ハーバード大学の医師ドナー・デンクラが唱えた説で、加齢と共に脳下垂体から放出される「殺人ホルモン」が基礎代謝に変化をもたらし老化を引き起こすとしています。この殺人ホルモンはDECOと呼ばれる酸素消費を下げるホルモンです。

・胸腺刺激説

免疫細胞をつくりだす胸腺は免疫機能の中枢ともいえる臓器です。免疫機能は体をウィルスや細菌から守る、生命維持に欠かせないシステムです。

胸腺は生まれたときは200~250gですが、60才には約3gにまで減少するといわれています。この胸腺の萎縮が身体の免疫機能を弱めて老化を促すというのが胸腺刺激説です。

・架橋説(かきょうせつ)

老化によって私たちの体は硬くなります。架橋説の中で、腱(けん)・骨・筋肉組織そして皮膚が硬くなるのはタンパク質の架橋形成によるものとしています。各々のタンパク質は隣どうしで結合し、架橋を形成することで硬くなっていくのです。

しかし皮膚や軟骨に多く存在するタンパク質の一つコラーゲンは、若者では架橋形成が少なくやわらかいのに対し、加齢と共に架橋形成が増加して固くなる特徴を示します。架橋説では、この架橋形成の増加が栄養の運搬を低下させ、さらには老廃物の蓄積を進めてしまうとしています。

・カロリー制限説

長年寿命に関する動物実験の研究を行ってきた医学者が唱えたのが、カロリー制限説です。この博士によると、「高栄養・低カロリー食」を続ければ、機能的な老化を劇的に遅らせることが可能だと示しています。つまり摂取カロリーと老化が関係しているというのがカロリー制限説です。

・生活速度説

人間は限られた量のエネルギーをもって生まれ、「生活速度」によってその消費スピードが異なる、つまり老化のスピードが変わってくるというのが生活速度説です。生活速度は呼吸量や心拍数を元に決まるとしています。

・テロメラーゼによる老化説

これまで紹介した学説の中で比較的新しい学説がテロメラーゼによる老化説です。テロメアは、染色体(遺伝情報が書き込まれたDNAを収納しているもの)の末端に存在している染色体を保護するキャップのような役割を果たしています。

テロメアは細胞分裂のたびに短くなり、一定以上短くなると細胞傷害や細胞死をもたらします。この結果、老化が進むといわれています。

近年、テロメアを再構築すれば老化を食い止めることができると考え、さまざまな研究が世界中で行われています。既にテロメアを修復する酵素(テロメラーゼ)も発見されており、がんの治療や若返りの治療に期待されています。

その他の老化学説については、先に述べた4つの老化の一般的学説に比べると全てが注目されているわけではありませんが、アンチエイジングを考える上では大切になってきます。

現在のところ、これらの学説1つで全ての老化のメカニズムを証明することはできていません。これらが複雑にリンクしている、あるいはまだ解明されていないメカニズムが存在するとも考えられます。

しかし、これらの学説が私たちの老化を食い止めるヒントになることには間違いありません。

さまざまな老化の学説から肌のアンチエイジングについて考える

それでは前述した学説から肌のアンチエイジングに活かすことに焦点を当てて見ていきましょう。

代表的な老化の学説4つから見えてくること

4つの学説には、消耗説・神経内分泌説・遺伝子コントロール説・フリーラジカル説があります。

消耗説からは、臓器の消耗をできるだけ遅らせること、神経内分泌説からは適切なホルモンバランスを保つことが肌のアンチエイジングにもつながるといえます。

臓器の消耗を避けるには、食事に気をつけ、毒素・紫外線・精神的ダメージなどあらゆるストレスにさらされないように意識することが重要です。

適切なホルモンバランスを保つには特に女性の場合、女性ホルモンの減少に気をつけなければなりません。女性ホルモンの1つ「エストロゲン」が低下すると乾燥肌・シワ・シミ・たるみが目立つ肌になってしまいます。そこで、体内でエストロゲンのような働きをするイソフラボンを積極的に摂取しましょう。イソフラボンは大豆製品に多く含まれています。

また、イソフラボンの配合された化粧品、サプリメントの使用もおすすめです。

遺伝子コントロール説では、遺伝時計をなるべく長く保つために、DNA損傷の予防に努めるようにしましょう。紫外線、食品添加物を多く含んだ食事、放射線、タバコを避けるなど生活習慣を意識することでDNAの損傷を防ぐことができます。

最後にフリーラジカル説です。フリーラジカル説は他の学説と理論が多く重なっているため、特に重要な老化説です。

肌のアンチエイジングで特に気をつけたいのは、フリーラジカルの1つ「活性酸素の発生を予防すること」と「発生した活性酸素を減らすこと」です。肌で活性酸素はシミやシワなどさまざまな老化のサインをつくるきっかけとなります。

肌だけではなく、大量の活性酸素は細胞やDNAを傷つけ、ガンを発生させる要因にもつながります。

・活性酸素の発生を予防するには

活性酸素の発生は意識することで減らすことが可能です。例えば、活性酸素を大量に生み出すものに、激しい運動、紫外線、ストレス、タバコ、食品添加物、環境汚染物質、酸化した油などが挙げられます。

また、最近の研究で高血糖(血糖値が高い状態が続くこと)も活性酸素を発生させ、老化やガン細胞の増殖を促進することがわかってきました。これらの活性酸素を大量に生み出す生活習慣を避けることが活性酸素発生の予防につながります。

・発生した活性酸素を減らすには

既に発生した活性酸素を減らすことも可能です。もともと私たちの体には活性酸素を除去するシステムが備わっています。活性酸素の働きを抑える抗酸化力をもつ酵素(SOD:スーパーオキシドジスムターゼ)が体内で働いています。

しかしSODの働きは30代以降、低下することがわかっています。つまり、抗酸化物質を外から摂取して活性酸素の働きを抑えればアンチエイジングにつながるのです。

主な抗酸化物質としては、ビタミンE(カボチャ、ほうれん草)、ビタミンC(ブロッコリー、かんきつ類)、βカロチン(緑黄色野菜)、アントシアニン(赤ワイン、黒豆)、イソフラボン(納豆、豆腐などの大豆製品)、カテキン(緑茶)、セサミン(ごま)、リコピン(トマト、スイカ)、カプサイシン(赤ピーマン、赤唐辛子)などが挙げられます。

さらに、近年注目されているのが「水素水」です。水素が豊富に溶けた水は、不安定な電子と結びつき体内で活性酸素の除去をしてくれます。水素水を飲んだり、肌につけたりすることで肌にハリ、うるおいが戻り、さらに美白効果も期待できます。

しかし、水素水は空気に触れるとすぐに水素が反応して抜けてしまいます。そのため、より新鮮な水素水を体内に取り込む必要があります。ペットボトルで販売されているものよりも、自分で水素水サーバーを使用してその場で水素水を作ることをおすすめします。価格は少し高いと感じるかもしれませんが、飲むだけではなく水素水をローションパックとして使用することもできます。

体内での活性酸素の発生を全て抑えることは不可能です。しかし、抗酸化物質を摂取することで体、肌の老化を防ぐことができます。

その他の老化学説から見えてくること

老廃物蓄積説では、肌に老廃物を溜めないことがアンチエイジングのキーになります。老廃物を溜めないためには肌の血行をよくし、腸内環境を良くするように意識することも大切です。腸内環境が悪いと毒素が体内に溜まってしまい、血流にのって肌にも届いてしまいます。

また、胸腺刺激説からは、免疫機能の維持がアンチエイジングに大切であることがわかります。免疫機能を高めるには生活習慣が鍵を握ります。規則正しい生活を心がけること、適度な飲酒、質の良い睡眠、ストレスを溜めないことが大切です。また、「笑うこと」も免疫力を高める効果があることが数々の研究で明らかになっています。

体を冷やさないように意識することも重要です。体温1度が上がると免疫力は30%上がるともいわれていることから、体を温めることが免疫機能の活性化に影響することがわかります。

その他、カロリー制限説からは、高栄養・低カロリーな食事を意識することが大切であることがわかります。

まとめ

日常生活で老化のメカニズムについて深く考える機会はあまりないかと思いますが、このようにさまざまな老化の学説から肌のアンチエイジングに活かせるヒントがわかります。

食生活を意識すること、ホルモンバランスを保つこと、老廃物を溜めないことなどさまざまなアンチエイジングの方法を挙げましたが、特に気をつけるべきことは、「活性酸素の発生を予防することと、除去すること」です。

抗酸化物質を豊富に含む食品、水素水を積極的に摂取しましょう。また、活性酸素の発生を増やす行為はやめましょう。

私たちは生きている限り、老化を完全に食い止めることはできません。そこでこれらの知識を習得し、日常生活に活かすことで老化の速度を遅らせることは可能です。

また、肌のアンチエイジングを意識した生活は、ガンなどの病気の発症予防にもつながります。1日でも早くアンチエイジングの習慣を身につけましょう。