医療用のローションや乳液・クリームを日常のスキンケアアイテムとして使用している方はいらっしゃいませんか。薬剤の配合されたアイテムを保険適用で購入できるとなれば女性が飛びつくのも無理はありません。

インターネットなどでは「効果が高いのに安い!」「高い美白効果がある!」「魔法の化粧品!」などと言われているのを目にします。

しかし本来はあくまで医療用に開発されたアイテムであり、通常とは違う使い方をしたり、日常的に使用したりすると副作用を生じる可能性があります。

今回は、巷で美容目的で使われている医療用アイテムを成分別に取り上げました。日々のスキンケア用品として使用して問題ないのでしょうか。

成分別!本来の使用方法とスキンケアに期待できる効果について

まず、医療用アイテムに含まれる成分のうち、スキンケアの効果を期待できるものとしては何があるのでしょうか。その成分について、以下で確認していきます。

ヘパリン類似物質

恐らく、ヘパリン類似物質を含む医療用の塗り薬をスキンケア用品として使用している方が一番多いのではないでしょうか。

ヘパリン類似物質を含んでいる塗り薬にはクリーム・ローション・そして乳液に似た剤型まで存在します。つまり、医療用の塗り薬でスキンケアラインが完結してしまうのです。しかも保険適用で安く、中には無料で手に入れる方もいらっしゃるでしょう。

ヘパリン類似物質は、もともと体内に存在する血液の凝固を抑制する「ヘパリン」という物質に似た働きを示します。ヘパリン自体も医薬品として使用されており、血行障害によって引き起こされる痛みや炎症を抑制する効果があります。

ヘパリン類似物質は「保湿」「血行促進」「抗炎症」の3つの働きを示し、医薬品の効能効果として皮脂欠乏症、筋肉痛、血行障害に基づく痛みや炎症の抑制効果などが挙げられます。

「保湿効果のある医療用成分」と聞くと確かに高い効果が期待できますが、同時に高い血行促進作用や抗炎症作用を持つことにリスクがあると言えます。

例えば、ヘパリン類似物質の塗り薬に報告されている副作用として痒みや発疹、潮紅(ちょうこう:肌が赤くなること)などがあります。これらは高い血行促進効果によって生じる症状と考えられます。

また、肌に炎症がないのに抗炎症作用のある医薬品を使用することも肌に良くないと考えられます。

従って、肌が実際にヘパリン類似物質の医薬品に適応する症状の場合は、肌に塗布することで高い効果が期待できます。しかし、肌コンディションが良い時に医薬品をスキンケア化粧品として日常使いするのはお勧めできません。

既にヘパリン類似物質の塗り薬を使用してかゆみや刺激、また「肌が赤いな」と感じる場合は使用を中止してスキンケア化粧品を用いるようにしましょう。

ワセリン

ワセリンは石油を精製した油です。石油由来と聞くと「肌に悪いのではないか」と考える方も多いと思いますが、高い安定性と皮膚に浸透しにくい点から赤ちゃんの肌でも使える安全性の高いものとして認識されています。

ワセリンは医療用だけではなく、市販のものや化粧品の原料としても広く使用されています。

ワセリンには「白色ワセリン」と「黄色ワセリン」の2種類あり、精製度が異なります。顔に用いる場合は純度の高い白色ワセリンを使いましょう。

前述した通りワセリンは安全性が高く、赤ちゃんの肌やデリケートな肌にも用いることができます。ワセリンは「皮膚の表面を覆って、肌の水分が蒸発するのを防ぐ働き」と「肌のバリア機能を高める効果」があります。しかし肌に潤いを与えたり、アンチエイジング効果を与えたりといった美容効果は残念ながらありません。

従ってワセリンは使い続けても問題はありませんが、美白やアンチエイジングなどの美容効果を求めるのであればスキンケア化粧品を用いるようにしましょう。

一方で、肌が炎症を起こして化粧品が使えない場合などに一時的に使うのにワセリンは適しています。

尿素

尿素は肌の「天然保湿成分(NMF)」の一つで水分を蓄えることができる性質を持っています。また、タンパク質の結合を壊す働きがあります。そのためスキンケアとしては保湿作用と肌を柔らかくする効果が期待できます。

尿素を肌に塗布すると角質(肌表面に存在するタンパク質)を柔軟化して、硬くなった皮膚の症状を改善することができるのです。

尿素は医薬品だけではなく肥料や化粧品にも配合されている成分です。

尿素は医療用の塗り薬として、魚鱗癬(ぎょりんせん:皮膚がうろこのように硬くなり剥がれ落ちる病気)やアトピー皮膚、乾皮症(かんぴしょう:肌の皮脂が減少することで皮膚が乾燥する病気)、角化症(かくかしょう:皮膚が厚くなり硬くなる病気)などに用いられます。

「肌が柔らかくなって保湿もされるなら尿素配合の塗り薬はスキンケアに最適!」と思われる方も多いのではないでしょうか。実際に尿素配合の化粧水なども存在します。しかし、医療用の塗り薬は配合濃度が非常に高いため日常使いは肌に負担となります。

先に述べた通りタンパク質の結合を壊して肌を柔軟化する作用はいわゆるピーリング作用です。

毎日高濃度の尿素配合塗り薬を肌に塗布しているとピーリング作用によって肌が薄くなり、バリア機能も低下してしまいます。尿素の美容効果をスキンケアに取り入れたいのであれば、尿素配合の化粧品を用いるようにしましょう。

アダパレン

アダパレンはニキビ治療の塗り薬として使用されている比較的新しい成分です。アダパレンは肌の中でビタミンAに似た働きを示します。ビタミンAには皮膚の弾力を維持している「コラーゲン」と「エラスチン」の生成を促進する効果、皮膚のターンオーバー(肌の生まれ変わり)を促進する効果があります。

そのためビタミンAには、コラーゲンやエラスチンによる肌の土台を整えてシワの改善効果や、肌細胞の生まれ変わりを高めてニキビの予防・改善効果があると言われています。

しかしビタミンA自体は非常に不安定な物質なため、医薬品においても化粧品においてもビタミンAではなく、「ビタミンA誘導体」やアダパレンを含むビタミンAに似た働きを示す「ビタミンA様成分」が用いられています。

特に化粧品に配合されているビタミンA誘導体は、成分の安定性や安全性を高めたため効果が弱くなっています。そのため、医療用に使用されているビタミンA誘導体やアダパレンなどに「高いシワ改善効果があるのではないか」「ニキビがすぐに治るのではないか」と期待されているようです。

確かに医療用に配合されているビタミンA誘導体やビタミンA様成分は、化粧品に配合されているものより濃度が高かったり、成分そのものの作用が強かったりします。

しかし、作用が強いということは副作用のリスクも高いということです。例えばアダパレンの副作用として、乾燥感・赤み・かゆみ・ヒリヒリ感・落屑(らくせつ:皮膚が剥けてくること)などが挙げられ、使用者の80%程度がこのような副作用を感じるそうです。

このような副作用からやはり素人がシワの改善目的でスキンケア用品として使用するにはリスクが大きいと考えられます。ニキビを改善する目的で使用したい場合は皮膚科医監視の下、用いるようにしましょう。

ビマトプロスト

「ビマトプロスト」と聞いてもピンと来ない方が多いと思いますが、「まつ毛が濃くなる」と聞くと分かる方が多いのではないでしょうか。

ビマトプロストとは「緑内障」という目の神経に障害が発生し視野が狭くなったり、部分的に見えなくなったりする病気の治療薬として開発された医薬品成分です。ビマトプロストは緑内障の患者の目の眼圧を下げるための点眼薬(目薬)として用いられています。

しかし、ビマトプロストを使用している患者さんから「まつ毛が伸びた!」「まつ毛が濃くなった!」という報告が次々寄せられ、ビマトプロストにはメラニンを増加する副作用があることが判明しました。

メラニンは肌や毛髪に存在する黒色の色素です。メラニンは美白を目指している人にとっては邪魔な存在に思えるかもしれませんが、髪を黒く保ち肌を紫外線から守る大切な役割を果たしています。目元のメラニンを増加させるとどうなるのでしょうか。メラニンの増加によって、まつ毛の濃さが高まりくっきり見えるようになります。

さらに目の周りで多毛化(たもうか:毛が増えること)が表れることもあります。つまり人によってはまつ毛が濃くなったり、伸びたり、増えたりするのです。

このようなビマトプロストの副作用を利用して、医薬品の点眼薬であるビマトプロストを「まつ毛美容液」として使用している人が存在します。眼科で「ビマトプロストを処方してほしい」と言っても緑内障でない限り医師は処方してくれません。一方で、ネット販売などで海外で販売されているビマトプロストの点眼薬を購入することができます。

「市販のまつ毛美容液は効果がなかったからビマトプロストを試してみたい」と思う方はいらっしゃると思いますが、前述した通りこれは緑内障の薬で眼圧を下げることを主な目的として開発された薬です。

いくらビマトプロストを「まつ毛だけに塗っている」と言っても一部が目の中に流れて眼圧に影響を与えてしまったり、目の周りにつくことで目元の皮膚が色素沈着して黒っぽくなったりする可能性もあります。目の周りが黒ずんで見えると一気に老けこんでしまうリスクがあるのです。

さらに、ビマプロストは黒目の色にまで影響を与えることがあります。つまり、「片目だけ黒目が濃くなってしまう」ということもあり得るのです。

また、2014年からビマプロストに専用のブラシをつけた医療用のまつ毛育毛剤が厚生労働省によって認可されました。「睫毛貧毛症(しょうもうひんもうしょう)」と診断された場合に限り、この育毛剤を処方してもらえます。睫毛貧毛症とはまつ毛が不足している病気のことです。

ただし、いくらまつ毛が少なくても、発毛可能な毛包(もうほう:毛を産生する皮膚組織)が存在しない場合には本来の効果が得られないことがあります。

従って自己判断でビマプロストをまつ毛美容液として使用するのはお勧めできません。まつ毛が濃くなったり伸びたりするメリットよりもリスクの方が大きいと言えます。

時間の問題?そのアイテム保険適用では購入できなくなるかも!

美容目的で上に挙げたような医薬品の使用が広がっている中、ついに厚生労働省が診療報酬改定(医療行為に対する対価への2年毎の見直しのこと)で対策を講じる方針を検討しています。

現在検討されているのが、ヘパリン類似物質の外用薬です。「処方量に制限を設ける」あるいは「本来の適用以外での使用の場合は保険適用から外す」などの対策が考えられています。

健康保険組合連合会が公表した「政策立案に資するレセプト分析に関する調査研究Ⅲ 」によると、ヘパリン類似物質の外用薬は年間約93億円分が美容目的で使用されていると言われています。

膨らみ続ける医療費を少しでも抑制するため今後ヘパリン類似物質をはじめ、美容目的で使用されている外用薬は健康保険からの適用が外れる可能性があります。

しかし、本当にこのような外用薬が必要な皮膚疾患を持つ患者さんにとっては迷惑な話です。美容目的で医薬品を使用することは肌へのリスク、そしてモラルの面からも見直す必要があると言えるでしょう。

まとめ

インターネットによる口コミや友人などの勧めでこれまで医薬品の外用薬をスキンケア用品として日常使いしていた方は、一度スキンケアアイテムを見直してみましょう。医薬品の使用を止めてスキンケア化粧品に切り替えることで、もしかしたら今ある肌トラブルが改善する可能性があります。

毎日肌に塗布するものだからこそ、高い効果や価格に惑わされずに慎重に選びましょう。


美白で失敗しない化粧品の選び方とは

シミやそばかすを退け、美しい美肌を目指すときに美白化粧品は欠かせません。化粧品に含まれる美白成分を活用することで、ようやく美しい肌を手にすることができます。

もちろん、このときは紫外線対策や生活習慣の改善も必要です。ただ、生活面での対策をすれば問題ないのかというと、それでは不十分です。美白化粧品を活用して、適切な美白対策をしなければいけません。

例えば、病気のときは「体の自然治癒力」に頼るだけでは不十分であり、薬によって症状を抑えることでようやく改善していきます。これと同じように、美白になるように化粧品によって補佐する必要があります。

ただ、美白化粧品は世の中にたくさん存在します。ただ、人によって肌質は大きく異なるため、適した化粧品はそれぞれ違います。そこで、どのような美白化粧品が良いのか厳選して掲載しました。化粧品選びでの失敗を避け、効果的な美白を実現させましょう。

オススメの美白化粧品と特徴の違い