「ナノテクノロジーを用いて開発された化粧品」と聞くと「すごい!」「最先端!」と感じることがあるでしょう。しかし「なぜナノテクノロジーがすごいのか」と問われるときちんとその答えを説明できる方は少ないのではないでしょうか。そもそもナノテクノロジーが具体的に何かを知らずに「何だか効果がありそう」というイメージで商品を購入している方も多いでしょう。

今回はそんな化粧品に応用されている「ナノテクノロジー」について詳しく説明していきます。

「ナノ」という単位

まず始めに、「ナノ」とは単位の名称のひとつです。日常的に1000倍を意味する「キロ」や1000分の1を表す「ミリ」といった単位を使用することはありますが、「ナノ」を使用することは稀でしょう。「ナノ」は10億分の1を表す単位です。長さの単位として「ナノメートル」が用いられます。

とはいえ、ナノメートルのものは想像しにくいのではないでしょうか。身近にナノメートル単位のものとして、私たちの体の細胞に存在する遺伝子情報を書きこんだDNAが挙げられます。DNAは直径が2ナノメートルです。また、ウィルスは10ナノメートルです。とても目には見えない非常に小さいサイズであることが分かります。

身近に使われているナノテクノロジー

それでは「ナノ」を応用したナノテクノロジーとは一体何なのでしょうか。

ナノテクノロジーとは「様々なものをナノスケールにして産業に活かす技術のこと」です。

ナノテクノロジーは「環境・エネルギー」「電子・情報」「バイオ・医療」「ナノ加工」「ナノ計測・ナノシュミレーション」といった様々な分野で用いられています。

・環境、エネルギー分野

太陽電池や有害物質の除去にナノテクノロジーが使われています。

・電子、情報分野

ナノテクノロジーは半導体や光通信、メモリ、ディスプレイなどITの開発に欠かせません。

・バイオ、医療分野

薬を体内の決まった場所で働かせる「ドラッグデリバリーシステム」に、ナノテクノロジーを応用してガンの特定部位に作用することができる薬が開発されています。

再生医療の分野ではナノテクノロジーを使うことで臓器の再生を効率よく進めることができるようになっています。

・ナノ加工分野

ナノ加工を施して新しい素材を開発したり、既に存在する素材にナノ加工を施して利用価値を高めたりしています。化粧品で用いられるナノテクノロジーはナノ加工分野に該当します。

・ナノ計測、ナノシュミレーション分野

ナノテクノロジーによってつくりだされたものを計測したりシュミレーションしたりすることも必要です。

このようにナノテクノロジーは素材・IT・バイオなど既に様々な分野で活用され、これからも研究が進んでより身近な技術となっていくでしょう。

化粧品で用いられるナノテクノロジー

それでは化粧品で用いられるナノテクノロジーについてみていきましょう。

化粧品では成分をナノサイズにする「ナノ化」という技術を用います。スキンケア用品とメイク用品で用いられるナノ化についてそれぞれ説明します。

スキンケア用品で利用しているナノテクノロジー

スキンケア化粧品ではエマルジョン(乳化粒子)をナノ化することでつくりだされる「ナノエマルジョン」が代表的なナノテクノロジーといえます。

スキンケア化粧品の主な構成成分は、水分・油分・乳化剤(油と水を溶かすためのもの)の3つです。これらの配合比率を調整して上手く混ぜ合わせることで化粧水・乳液・クリームといった剤型をつくりだしています。

化粧水・乳液・クリームの中で、一般的に化粧水は最も水分の配合比率が高くなっています。水分と保湿剤のみで油分を含まない化粧水も存在します。しかし油分を含まない化粧水は肌なじみが悪く、潤った感じがしません。

潤いを高めるためにグリセリンなどの保湿剤を高配合すると、今度は肌の表面がベタつき使用感が低下してしまいます。

従って肌なじみを良くし、肌の中まで潤った感覚を与えるためには油分がある程度必要なのです。しかし、水に油は溶けません。油を溶かすためには乳化剤が必要となります。

ただ、油と乳化剤を配合したからといって簡単に水分に油を溶かせるわけではありません。油を高配合すると化粧水は白濁する上、時間の経過と共に分離してしまいます。

つまり、安定性を保ちながら化粧水に油分をたくさん配合するのは非常に難しいのです。そこで用いられるのが「ナノエマルジョン」です。エマルジョン(乳化粒子)をナノ化することで油を安定的に溶かすことができます。その上、ナノエマルジョンは粒子が細かいため白濁しないのです。

一般的にナノエマルジョンは高圧乳化によってつくることができます。高い圧力によって衝撃を加え粒子をより細かくしナノ化を可能にしています。

また、ナノエマルジョン以外にも美容成分そのものをナノ化しているものも存在します。肌のバリア機能に重要なセラミド、保湿作用のあるヒアルロン酸、肌の弾力に関わるコラーゲンなどがナノ化されてスキンケア用品に配合されています。

このようにスキンケア化粧品ではナノエマルジョンやナノ化した美容成分を配合するナノテクノロジーが利用されています。

メイク用品で応用されるナノテクノロジー

メイク用品に用いられるナノテクノロジーは、主にパウダーの加工で使われています。

酸化チタン、酸化亜鉛、シリカパウダー、酸化鉄、白金、酸化ジルコニウム、カーボンブラックといったアイカラーやファンデーション、日焼け止めに配合されるパウダーにナノ化された粒子が配合されています。

実はナノ化やナノ加工・コーティングされたパウダーは決して目新しい技術ではなく、2000年以前から用いられてきました。

しかし近年では混合の難しかった原料をナノレベルで組み合わせたり、ナノ加工やナノコーティングによって機能性が高まってきています。

なぜ「ナノ化」が良いの?

ナノ化によって成分や原料を微細化してスキンケア用品やメイク用品に活かしていることを説明しましたが、ここではナノ化のメリットについてそれぞれ述べていきます。

スキンケア用品におけるナノ化のメリット

スキンケア用品では、ナノ化した乳化粒子「ナノエマルジョン」を配合していると前述しました。

そのメリットは、以下の通りです。

・浸透力を高めることができる

人間の細胞同士の間隔は、約250ナノメートルです。つまりこれより大きい成分や粒子は肌の奥へと浸透することができません。ナノエマルジョンやナノ化した美容成分は肌の奥へ働きかけると考えられています。

実際にナノエマルジョンが配合されているスキンケア化粧品は使用感が良く、肌の奥まで潤った感覚があります。

・化粧水に油分を安定的に高濃度配合できる

化粧水は水性成分のみでは肌に塗布しても弾いてしまい、肌なじみが悪くなってしまいます。

また、水分は時間の経過と共に蒸発してしまうので塗布したときは潤った感覚があってもしばらくすると乾燥してしまうのです。さらに水分が蒸発するさい、「気化熱」と呼ばれるエネルギーが必要となり、肌内部の水分も同時に奪われてしまいます。つまり、水分が蒸発すると肌はより乾燥してしまうのです。

従って水分の蒸発を防ぐ上で油分が重要となります。先程も述べた通り、化粧水に安定性を保ちながら油を高配合するのは難しいです。しかし、ナノエマルジョンは粒子が細かいため安定しており、油分を高濃度に配合することができます。ナノエマルジョンを用いれば、クリームと同じ配合比率で化粧水をつくることだって可能です。

もちろん、乳化剤を高配合することでナノエマルジョンを用いなくても油を溶かすことは可能です。しかし高濃度の乳化剤は肌に負担がかかってしまいます。

このように、ナノエマルジョンは化粧水に安定性を保ちながら油分を高濃度配合ができるのです。

・化粧水の透明度を保つことができる

通常、水と油が混ざったエマルジョンは白濁しています。また、ある程度油分を溶かそうとすると乳液やクリームのように粘性(ねばりけ)の高いものになってしまいます。それでは乳液やクリームとの差別化ができません。

ナノエマルジョンはある程度の透明度を保ちながら、粘性も高まらない化粧水をつくることができます。

また、ナノエマルジョンは化粧水だけではなく、乳液やクリームにも配合されています。浸透力が向上することで使用感がより良くなります。

メイク用品におけるナノ化のメリット

メイク用品で配合される様々なパウダーがナノ化されていることを既に説明しました。

メイクパウダーにおけるナノ化のメリットは使用感と機能性の向上です。

例えば日焼け止めの紫外線散乱剤で用いられる酸化チタンや酸化亜鉛は粒子が大きいと、ざらついたり、きしんだりして使用感が悪くなってしまいます。ナノ化した粒子を配合することでなめらかなつけ心地に仕上がります。

また、紫外線散乱剤の弱点として「白浮き」が挙げられます。パウダーをナノ化することで光の乱反射を防いで白浮きを改善し、さらに透明感を高めることができます。それに加えて紫外線防止効果も高まります。

この他にも、肌に刺激を及ぼす粒子の表面をナノ加工・コーティングして肌への負担を低減させる技術や、性質の異なるパウダーをナノレベルで均一に複合化して相乗効果を高めたパウダーなどが開発されています。

「ナノ化」の問題点は?

いいことずくめに思えるナノ化ですが問題点もあります。

ナノ化パウダーの問題点

ナノ化パウダーは安全性上の問題点が2つ指摘されています。それは「ナノ化パウダーが体に入り込んでしまい蓄積してしまうのではないか」という点と「ナノ化パウダーが肌へ刺激を与えるのではないか」という2点です。

・ナノ化パウダーが蓄積する?

ナノ化パウダーが細胞の隙間より小さいサイズ(250ナノメートル以下)であれば細胞の間を通り抜けて肌の奥へと浸透してしまう可能性が指摘されています。また、空気中に舞い散ったナノ粒子が肺に吸入され、血液中に入り込む可能性もあります。

しかし、現在のところメーカーなどでは安全性試験を行った上で問題ないとしています。

ただ、今後も検証が必要とされているので100%安全だとは言い切れません。

・ナノ化パウダーは刺激がある?

ナノ化パウダーは前述した通り使い心地を向上させたり機能性を高めたりするのですが、粒子は細かくなるにつれてその表面積が大きくなります。つまり、それだけ肌に接触する面積が広くなり、肌への刺激につながるのではないかと考えられています。

まとめ

今回は一般的に化粧品に用いられているナノテクノロジーのみ紹介しましたが、この他にもメーカー独自で開発し利用しているナノテクノロジーも存在します。

これからは「どのようなナノテクノロジーが活かされているのか」という点についても注目してみてください。今後もナノテクノロジーの進化によってスキンケア・メイク化粧品がさらに進歩することが期待できます。


美白で失敗しない化粧品の選び方とは

シミやそばかすを退け、美しい美肌を目指すときに美白化粧品は欠かせません。化粧品に含まれる美白成分を活用することで、ようやく美しい肌を手にすることができます。

もちろん、このときは紫外線対策や生活習慣の改善も必要です。ただ、生活面での対策をすれば問題ないのかというと、それでは不十分です。美白化粧品を活用して、適切な美白対策をしなければいけません。

例えば、病気のときは「体の自然治癒力」に頼るだけでは不十分であり、薬によって症状を抑えることでようやく改善していきます。これと同じように、美白になるように化粧品によって補佐する必要があります。

ただ、美白化粧品は世の中にたくさん存在します。ただ、人によって肌質は大きく異なるため、適した化粧品はそれぞれ違います。そこで、どのような美白化粧品が良いのか厳選して掲載しました。化粧品選びでの失敗を避け、効果的な美白を実現させましょう。