近年、様々なメーカーが「幹細胞コスメ」を販売するようになってきました。中には「幹細胞コスメを使えばメスを用いずに美容整形ができる」などと騒がれていることもあります。

「幹細胞」と言えば、再生医療(人体の組織の自己修復力を高めることで機能を回復させる医療方法)の分野においてその技術がめざましく進展し、これまで不可能だった治療が可能になってきています。

「幹細胞コスメ」と聞くと「幹細胞が配合された化粧品」と解釈している方が多いと思いますが実は違います。幹細胞コスメに幹細胞は入っていません。

では幹細胞コスメとは一体何で、どのような効果が期待できる化粧品なのでしょうか。

幹細胞とは一体何か?

まずは「幹細胞」について説明します。「幹細胞」とは細胞を再生したり、新たに細胞を作りだしたりする働きをもつ細胞のことです。

幹細胞にはダメージを受けた細胞や死んだ細胞のかわりに再生することができる「組織幹細胞」と、どんな細胞も作り出すことのできる「多能性幹細胞」(「ES細胞」とも呼ばれます)の大きく二種類が存在します。

組織幹細胞はその組織のどんな細胞にも分化(分裂・増殖すること)することができます。例えば、皮膚の幹細胞は肌表面に存在する表皮細胞にも、肌の奥に存在する真皮細胞にも、メラニン色素(シミの元になる色素)を放出するメラノサイトにも分化することが可能です。

肌の幹細胞が正常に働くことで、肌の生まれ変わり(ターンオーバー)が機能して肌を美しく保つことができます。

組織幹細胞はその組織のみの細胞を再生できるのに対し、多能性幹細胞は全身のどんな組織の細胞も作ることができるのです。

例えば、多能性幹細胞から心臓や肝臓の細胞を作ったり、皮膚の細胞も作ったりすることができます。2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞したips細胞も多能性幹細胞のひとつです。ips細胞は元々体に存在する幹細胞ではなく、人工的に作り出された多能性幹細胞です。

ips細胞の誕生によって、臓器移植しか治療の選択肢がなかった様々な病気を「必要な細胞をips細胞から作る」ことで、治療が可能になったのです。

既にips細胞を用いて心臓の機能を回復させたり、見えなくなった目の視力を回復させたり、脳の神経細胞をips細胞から作り脳疾患の治療をしたりして実用化へ向けた検討が行われています。

この幹細胞技術を美容に応用すると、無限の可能性が広がります。

例えば、肌の皮膚細胞を幹細胞から再生して「80代の女性の肌を10代の肌にする」というような究極のアンチエイジングも理論上は可能です。夢のような若返りの技術が既に存在しているものの、一般的な実用化にはまだまだ時間がかかります。

なぜなら、このような人工的な細胞の増殖はガン化を招くリスクがあるからです。その他にも拒絶反応など安全性・副作用の点から検討するべき課題がたくさんあります。幹細胞を応用した美容技術が一般的になるのはまだ先の未来になるでしょう。

既に存在する幹細胞を用いた美容技術

まだまだ一般的な実用化には時間がかかると述べましたが、美容先進国とも言われるアメリカや韓国では既に幹細胞が美容に応用されています。

自分の幹細胞から肌細胞を作り出し肌に注入して、こけた頬をふっくらさせたり、シワを消したり、豊胸手術に使ったりしています。

日本でも一部の美容クリニックでこのような手術を受けることが可能です。ただし、まだ幹細胞の応用は始まったばかりで実績も少なく、安全性や副作用の問題が指摘されています。

幹細胞コスメとは?

それでは本題の「幹細胞コスメ」についてです。

「では今既に市販されている幹細胞コスメって一体何?」と思われた方がいらっしゃるのではないでしょうか。

市販されている幹細胞コスメに幹細胞は入っていません。幹細胞を培養した後の上澄み液(培養液)を精製した「幹細胞培養エキス」が配合されているのです。

「幹細胞の培養液では何の効果も得られないのではないか?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、幹細胞の培養液には培養した際に幹細胞によって生成されるアミノ酸やタンパク質・成長因子(Growth Factorとも呼ばれる細胞の成長を促進する物質)などの美容成分が含まれています。

つまり、幹細胞コスメには幹細胞の培養液が配合されており、その副生成物である美容成分による効果が期待できるということです。

言い換えると、幹細胞コスメを使用しても肌の細胞が直接再生されるわけではありません。残念ながら幹細胞コスメは、インターネットで騒がれているような究極のアンチエイジングコスメではないのです。

「幹細胞培養エキス」はわずかな量しか配合できない

さらに、幹細胞コスメに配合されている幹細胞培養エキスの量はほんのわずかです。その理由はふたつ挙げられます。

ひとつはコスト面です。幹細胞培養エキスは製造工程に非常に費用がかかります。まず原料の由来となる幹細胞を取り出さなければなりません。

現在幹細胞は、植物由来・動物由来・ヒト由来のいずれかから採取されています。これらの幹細胞を取り出し培養するには高い技術と設備が必要になります。

特にヒト由来の幹細胞培養エキスでは幹細胞を提供するヒトの厳しい選定、細胞の管理、さまざまな安全管理基準の試験を得る必要があり、原料の製造に莫大なコストがかかります。

このように非常に原価の高い幹細胞培養エキスはコストの面からあまり配合できないと考えられます。

従って、幹細胞培養エキス自体には美白効果・肌細胞の活性化・抗炎症効果・保湿効果など様々な美容効果があると言われていますが、わずかしか幹細胞培養エキスが配合されていない幹細胞コスメ自体にそのような効果があるかは疑問です。

ふたつ目は安全性の面です。幹細胞培養エキスには幹細胞自体は含まれていないもののその副生成物である成長因子やタンパク質によってアレルギーを引き起こす可能性があります。従ってコスト面をクリアしたとしても配合量には慎重にならなければなりません。

以上ふたつの理由から幹細胞コスメに幹細胞培養エキスはわずかな量しか配合されていないと考えられます。

「幹細胞培養エキス」の種類について

現在流通している幹細胞培養エキスの種類について詳しく見ていきましょう。先ほど述べた通り、幹細胞培養エキスの原料の由来は現在のところ植物・動物・ヒトの3種類です。

・植物由来の幹細胞培養エキス

植物由来の幹細胞培養エキスとして「リンゴ幹細胞エキス」や「アルガン幹細胞エキス」がよく用いられています。フルーツの実や樹木の芽から幹細胞を取り出し培養してエキスを製造しています。

・動物由来の幹細胞培養エキス

動物由来の幹細胞培養エキスでは、羊由来の幹細胞を用いることが一般的です。羊の幹細胞はヒトの幹細胞と構造が似ていると言われています。

・ヒト由来の幹細胞培養エキス

ヒト由来の幹細胞培養エキスで最も一般的に用いられているものが、脂肪由来の幹細胞です。脂肪由来幹細胞は脂肪以外にも皮膚や骨、筋肉、神経などに分化することができるため再生医療の分野でも最も用いられている幹細胞です。

また、肪由来幹細胞は皮下脂肪から採取できるため簡単に採れるというメリットもあります。

「幹細胞」自体に働きかける幹細胞コスメ

幹細胞コスメと呼ばれるジャンルの中には幹細胞の培養液を精製したエキスの配合以外にも「肌の幹細胞を活性化」することを期待した幹細胞コスメが存在します。

例えば、肌の幹細胞の働きを高めると言われている植物エキスがいくつか存在します。このような植物エキスを配合することで肌の再生力を高めることが期待されています。

また、「ある香りが脳内のオキシトシンというホルモンの分泌を促し、オキシトシンが肌の幹細胞に働きかけて幹細胞を活性化する」という研究結果が報告されています。このような作用を持つ香りを配合したコスメも「幹細胞コスメ」に分類することができます。

ここまでで、現在存在する幹細胞コスメは「幹細胞の培養過程で生じる副生成物を利用した美容効果」「幹細胞を活性化することで肌の再生力を高める美容効果」を期待できる化粧品であると言えます。

まとめ

現在市販されている幹細胞コスメは「最先端の医療技術が使われている」という様なイメージばかりが先行しており、実際に肌を若返らせたり再生したりする効果はありません。しかし、「幹細胞コスメ」という付加価値がつくため価格が跳ね上がっている状態なのです。

従って幹細胞コスメに高額な化粧品代を払うよりも、保湿・抗炎症・美白といった効果が分かりやすく確実なスキンケア商品にお金をかける方が賢い選択と言えるのではないでしょうか。

しかし、今後幹細胞の応用・実用が進み、安全性が確立されれば幹細胞自体を配合した本当の幹細胞コスメが誕生する可能性は十分にあります。幹細胞そのものが含まれた幹細胞コスメであれば、肌が再生し本当に若返るかもしれません。


美白で失敗しない化粧品の選び方とは

シミやそばかすを退け、美しい美肌を目指すときに美白化粧品は欠かせません。化粧品に含まれる美白成分を活用することで、ようやく美しい肌を手にすることができます。

もちろん、このときは紫外線対策や生活習慣の改善も必要です。ただ、生活面での対策をすれば問題ないのかというと、それでは不十分です。美白化粧品を活用して、適切な美白対策をしなければいけません。

例えば、病気のときは「体の自然治癒力」に頼るだけでは不十分であり、薬によって症状を抑えることでようやく改善していきます。これと同じように、美白になるように化粧品によって補佐する必要があります。

ただ、美白化粧品は世の中にたくさん存在します。ただ、人によって肌質は大きく異なるため、適した化粧品はそれぞれ違います。そこで、どのような美白化粧品が良いのか厳選して掲載しました。化粧品選びでの失敗を避け、効果的な美白を実現させましょう。